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職人のこころ

なんてったって、仕事が楽しい。大工 北野 勇二 (桃井建設株式会社)

木の里ならではの風景

DSC_0037.JPG 中津川市駒場の桃井建設さんの作業場にお邪魔した。 昔からこのあたりは、良質な木材の産地とされ、貯木場、製材所、大工さんの作業場などには、木を割る、挽く、削る、大型製材機や木工機の轟音。削りくずから強烈に立ち上る木の香、それらがあたりまえのようにあったが、ふと気がついてみれば、こんな光景は、もう懐かしいもののひとつになってしまっていた。が、この作業場には、たくさんの材木が積まれ、何人もの職人さんが、それぞれに、のみや曲尺を片手に黙々と作業をこなしていた。どこか郷愁をさそう、ほっとさせてくれる空気が流れている。

最近ではコスト削減と能率化のために、構造材の加工を、コンピュータ処理する外部工場に委託するプレカット工法を取り入れている大工さんが多い中で、桃井建設さんは、全工程自社加工が自慢の会社である。
そのこだわりは、材料の選定から加工、施工に至るまですべて、自社で細心の注意を払い、全責任を負うというところにあると、大工の北野勇二さんは語る。

仕事が楽しい

DSC_0005.JPG 北野さんの開口一番は「なんてったって、仕事は楽しい。」だった。 この桃井建設さんで大工一筋にもう33年。子供の頃からものを作ることが好きだった北野さんは、この仕事は苦労もあるけど、その苦労を乗り越えて出来た家が、お客さんに喜んでもらえた時が一番嬉しいし、自分が仕事をして、ひとつの家がだんだん出来上がっていく過程が、楽しいのだと話す。 何が一番得意かと聞くと、迷わず「何でも!」――― 即答であった。 材料のきざみから造作まで出来ないことはない、旧来の工法による純和風住宅は得意だが、今のはやりの洋風建築や、新しいものに取り組むのも、またいろいろと工夫が出来て楽しいと、なんとも頼もしい大工さんだ。 かなり使い込まれた風情の墨坪に曲尺、チョンナまでもが、日常の、あたりまえの道具として扱われている。テキパキと動く働く人の手というのは、じっと見ているだけでも興味深いものがあるが、この手によって刻まれた材木が、やがて大きな家を支える大事な梁や柱となることを想像すると、北野さんの「仕事が楽しい」という気持ちがしみじみと伝わってくる。

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実際の現場で造作に入ると、お客さんの意向を聞きながら、なるべくお客さんのイメージに沿うように仕事をしなければならない。そんな時、お客さんから話しを聞いて、お客さんの考えているイメージを捕らえるのはなかなか難しいが、たとえばその家の奥さんなどから、収納の方法について注文を受けたとき、狭いスペースを使ってたくさんのものが収まるように工夫して、そのお客さんの想像以上の仕事が出来たときなどは、大変喜んでもらえるので、工夫することは苦労といえば苦労・苦心ではあるけれど、それがこの仕事の楽しさだ ―――――― そう語る北野さん。
注文者の側から見れば、こんなふうに現場で大工さんとあれこれ打合せしながら、設計図にない注文を、腕と工夫で解決できることだったら、多少のことならガタガタ言わず引き受けてくれるというのはなんといってもありがたいことである。
それが出来るということは、この職人さんが、全工程に責任を持って、ある程度現場判断を任せられるだけの腕前があるからこそで、この桃井建設さんには、そんな経験豊富な大工さんが6人もいて、各々の持ち場持ち場に働いている。そんな現場のひとつ、建前が済んで造作工事に入ったばかりの中津川市坂本地区のI邸を訪問させて頂いた。


三代もつ家


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純和風平屋作り、80坪ほどはあるであろうか、最近では珍しい土壁塗りで、天井も高く一部屋一部屋も大きい。なにしろ、『どっしり』、どっしりとしているというのが第一印象であった。
施主さんのお宅のおばあちゃんらしき人が現れる。桃井建設さんの紹介で見学に来たことを告げると、快く受けてくださった。
「そんなに丁寧にせんでもいいに、って言うけど、本当に大工さん、丁寧にやってくれるに。もう本当に一生懸命親身になって、よーやってくれるよ。あのね、前の家も長いこと住める家やったで、今度も私、三代くらい先までもつ家がいいと思ってね。それで長持ちする家を頼んだの。やっぱりこういう家が私たちには一番いいよ。」

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これだけ誉め言葉が続くと、この方は桃井建設さんが仕込んだ宣伝マンではないかと思われるかもしれないが、いえいえ、決してそんなことはない、正真正銘この家のおばあちゃん。小柄でにこにことしたお顔から次々と興味深い話しがこぼれ落ちる。
「もう私は近所の人にもないしょでこっそり建てるつもりでいたけど、いざ建前の日となると、みんなお祝いを持ってきてくれるでね、ないしょにしとけんようになってね。」
そりゃそうでしょう、こんなに大きなお家を建てるのにこっそりとは出来ない。
「それで、建前といって宴会などはせんかったけど、紅白のお餅をついて、バケツの中に、こんぶとこんにゃくを入れて・・・・・あのねぇ、建前のお返しには昔から、【ん】のつくものがいいって、【運】がつくから【ん】のつくもの、こんぶ・こんにゃくなんかを、お使いものにするのやよ。こんぶは10センチくらいの長さのこんぶが小袋に入れてあるやつ、こんにゃくはひとつひとつ袋にはいったやつを3つ入れて、それに紅白の餅。・・・・みんな運が良くなるようにってね。」

なるほど、運がつくようにと【ん】がつくものを使う。建前のお祝い返しには、昔から火事になることを嫌ってというか、火の用心の心がけのためにというか、とにかく水の汲めるものをお返しにすると良いというので、バケツやお鍋を使うことは聞いていたが、そのバケツの中に、こんぶやこんにゃくというのは初耳であった。この地域の昔ながらの風習なのだろうか。
なにしろ、そんなおばあちゃんのお話しの中からは、施主さんと施工者の意思疎通がうまくいって、工事も順調に進んで、完成が待ち遠しい様子が伺えた。三代もつ家、たしかにそう確信できる家が、ここにあった。

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すぐお隣にもう一軒、桃井建設さんの建築中の現場があった。これは建売住宅だそうだ。桃井建築さんでは、注文住宅ばかりではなく、土地付分譲住宅の販売も多く手がけている。こちらのほうは、その土地・建物の現物を見て購入を決めることができるので注文住宅でいちいち打ち合わせをするのが面倒だという方にはおすすめ。注文住宅・建売住宅、いずれもお客さんのニーズに合わせて対応が可能だが、どちらも地元中津川で建築業を営む業者として責任施工にはぬかりがないということである。(了)

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